ミャンマーの民主派政府が暗号資産テザーを公式通貨に

2021年12月、ミャンマーのアウンサンスーチー派(民主派)が率いるNUG(国民統一政府)は、時価総額最大のステーブルコインであるテザー(USDT)を公式通貨にすると発表しました。

Announcement regarding NUG acceptance of Tether

今回はこれがどういった意味を持つのか、ミャンマーの内政状況を深堀りしながら解説していきます。

ミャンマーの歴史

まずはミャンマーの現状を知るため、簡単に同国の歴史を見ていきます。

ミャンマーの近代史は「軍」と「民主派」の戦いと言い換えることができるでしょう。

1948年にイギリスから独立したミャンマーは、ほとんどの間、独立に貢献した軍が政権を握っていました。

彼らは国内に存在する少数民族をはじめとした武装勢力をコントロールし、統一国家を実現することを大義名分とし、独裁政権として君臨しました。

ただし、そんな状況を打開しようとしたのが、ご存じのアウンサンスーチー氏です。イギリスで育った彼女は、独立に貢献したアウンサン将軍の娘。国民的な人気も極めて高く、彼女の率いるNDLという民主派政党が2016年に選挙で圧勝し、ミャンマーは急速な民主化に向かいます。

しかしながら2021年2月、軍は再度クーデターを起こし政権を掌握してしまいます。国家顧問であったアウンサンスーチー氏は拘束され、国民は現在も軍による抑圧に苦しんでいます。

これがミャンマーの歴史と現状です。

NUG(国民統一政府)とは

では今回の主役であるNUG(国民統一政府)とはどういった存在なのでしょうか。

NUGはNational Unity Government of Myanmarの略で、軍事クーデターに対抗し設立されました。

2021年10月、フランス上院と欧州連合はNUGを正式な政府として承認します。

これに対しミャンマー国軍は、NUGの存在を認めておらず、NUGのメンバーは拘束を逃れるため国内の少数民族支配地域もしくは国外に潜伏中です。もし国軍に発見された場合、逮捕・拷問・死が待ち受けていると言います。

国民はNUGに対する寄付や支援が禁止されているためNUGのメンバーはほぼ無給で活動を続けているといいます。

テザーとは

では次にNUGが公式通貨に採用したテザーとはどんな暗号資産なのかについて見ていきましょう。

テザーはステーブルコインの一種です。ステーブルコインとは、価格変動の激しい暗号資産に裏付けを持たせることで価格の安定化を図り、実用性を高めるためのもの。

テザーは法定通貨である米ドルを担保にしているため、米ドルと同じ値動きをするのが特徴です。これにより、投資対象としては扱われないものの、その安定性は広く認められており、暗号資産の時価総額ランキングで第5位となっています。

もちろん、中央集権型の法定通貨とは異なり、テザーを発行するTether limited社の倒産リスク等も考えられますが、通貨の実用性に関しては他の暗号資産とは比べ物にならないでしょう。

テザーを公式通貨にする目的

ではNUGがテザーを公式通貨として採用した思惑とは一体何なのでしょうか。

NUGの財務大臣はFacebookにて、テザーを採用した主な理由として「貿易、サービス、決済システムをより効率化・迅速化するため 」と述べています。

もちろんこれらも理由の一部ではあると思いますが、他にも軍事政権による金融システムの支配への対抗や、打倒軍事政権のための資金集めを促進するためといった理由も大きいのではないかと言われています。

また、軍事クーデターによって、法定通貨であるチャットの価値が大きく下がったため、今後の国内の経済を安定させるという意味でもテザーを公式通貨とする選択は良い選択と言えるかもしれません。

テザー社の反応

テザー社はNUGの決断に対し、公式ブログにてコメントしています。

「世界各地の政治・金融情勢は、よりステーブルで安全な通貨を求める人々の心を動かし、多くの人々がTetherに注目するようになって来ました。米ドルペッグであるTetherは、ブロックチェーン上で米ドルを保有するための安全で確実な方法であると同時に、インフレや反プライバシー法などと戦っている経済にとって信頼できる選択肢を提供しています。

共和国国民統合政府(NUG)は、ノーベル平和賞受賞者のアウンサンスーチー氏が率いており、米国から表彰を受けています。また、同党は欧州連合(EU)からも認められています。今回、USDTを公式通貨として認めたことで、米ドルの強さと、世界の市民に安全な避難場所を提供する能力を示しました。これが意味するのは、暗号通貨の安全性よりもまず、自国の政府や通貨に不安を抱える人々の、米ドルに対する長年の信頼ではないでしょうか。」

Tether Responds to Myanmar Adoption of USDT as Official Currency

まとめ

今回のニュースで、暗号資産が決して投資対象としてだけでなく、一国を政治的な窮地から救う可能性すら秘めたものであることを、改めて気づくことができました。

Tether社のコメントにもあったように、自国の政府や通貨に不安がある人々にとってのソリューションとしてステーブルコインを筆頭に暗号資産全体がSocial goods(社会的便益)のために機能していくことを祈っています。

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