ビットコインは本当に環境に悪いのか?

ビットコインは度々、その消費エネルギーの大きさから「環境負荷が大きすぎる」と批判されてきました。確かに、ビットコインに関連する電力使用量(主にマイニングに関わるもの)は、年間で約126テラワットに達しており、これはスウェーデン一国の電力量に匹敵します。

批評家は度々、この事実を盾に「ビットコインは環境破壊を助長する悪である」かのような論理を展開しますが、果たしてそれは事実なのでしょうか?

今回は、誤解を生みがちな「ビットコインが環境に悪い」という主張の中にある、しばしば誤解を生むファクターについて紐解いていきます。

「エネルギーの消費」は悪ではない

冒頭の批判における最もミスリーディングな教訓は「エネルギー消費そのものが悪である」という考え方です。

人類の発展は、エネルギーの発展とともにあります。

旧ソ連の天文学者であるニコライ・カルダシェフが考案した「カルダシェフスケール」によれば、「文明の発展度は、エネルギーの消費量によって定義づけることができる」のです。

つまりエネルギーの消費量が多ければ多いほど、文明は発展してきたし、これからも発展していく可能性が高いということです。

カルダシェフスケールでは、発展度を3段階に分けそれぞれを定義していますが、地球は発展度が最も低い「タイプI文明(惑星文明とも呼ばれ、その惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用および制御できる。)」にすら達していないといいます。

それもそのはず、地球は恒星である太陽からのエネルギーを活用し始めたばかりで、無駄になっている膨大なエネルギーが眠っているからです。つまり、地球は依然として「利用可能な全てのエネルギーを使用」できていないということです。

このような壮大な観点からすると、文明の発展のためには、エネルギー消費はむしろ増やしていくことが良しとみなされるべきなのではないでしょうか。

エネルギー源が重要

上記でエネルギーの消費量はむしろ増やした方がいいのではと述べましたが、ここで重要になるのはそのエネルギー源です。

もしエネルギー源が温室効果ガスの排出を含むものであれば、気候変動抑止の観点から、エネルギーの消費量を減らすべきだという議論は成立します。

実際に、上記で申し上げたようなビットコインに対する批判というのは、「エネルギー源の大半が温室効果ガスを排出するもの」という前提に成り立っているのかもしれません。

しかしながら、ビットコインマイナーが構成するビットコインマイニング協議会(Bitocoin Mining Council)によれば、現在のマイニングにおける使用電力の58%は二酸化炭素排出がゼロであるクリーンなエネルギー源を使用しているといいます。

また、マイニングのインセンティブである利益を最大化するには、費用である電力使用料を最安値に抑えることが重要です。現在再生可能エネルギーは電気を生み出すのに最も安価な方法と言われており、これからエネルギー源としての再生可能エネルギーへの移行、ひいては再生可能エネルギー全体のさらなる開発を進めるインセンティブとすらなりうるのです。

また、多くの批評家は、ビットコインの需要が増え、取引が増えていけばいくほどマイニングによる消費電力は増加していくと唱えます。しかし、マイニングによる電力消費は年々増加していくわけではありません。ビットコインの特性上、そうなる可能性は低いと言っていいでしょう。

まずビットコインには半減期というシステムがあります。これは、4年ごとにマイナー(マイニングを行う人たち)への報酬が半分になっていくというシステムです。最終的には報酬はゼロになります。つまり、この報酬を目当てにマイニングをする人々は減っていくということです。

もう一つ、マイナー達が得ることのできる収入としては取引を完了させたときの手数料があります。ただし、ビットコインのシステム上、一日に取引できる件数には限りがあるため、これを目当てにマイニング業者が爆増するという未来も考えにくいのです。

このように将来マイニングによる消費電力が増加し続けるという可能性は低いと言えるのです。

従来の金融システムと比較すると

よくある批判の根拠の一つに、「ビットコイン取引1件に必要な電力は、クレジットカードのビザによる45万3000件の取引分に相当する」というものがあります。

ただし、これは本当に正確な比較なのでしょうか?

クレジットカードのビザの取引が成り立つには、従来の銀行や国際的な金融システム、そしてそれを成り立たせる米国の外交的なポジション、軍事力等が背景にあります。これらのインフラが成立するには、どの程度の莫大な消費エネルギーが必要なのでしょうか?上記の根拠にはそういった間接的なエネルギーは含まれていないのです。

こういった間接的なエネルギー量も含めると、事実は少し違って見えてきます。ビットコインが従来の金融システムに取って変わるポテンシャルがあるのであれば、ビットコインと比較すべき対象は、そのシステム全体なのです。

しかしながら、システム全体の間接的なエネルギー消費量を全て計算するのは至難の業ですし、計算できたとしても非常にあいまいなものになってしまいます。一方でビットコインに関するエネルギー消費量は、極めて明白で透明性があり、分かりやすいのです。これが、ビットコインのエネルギー消費量に対して批判が集中しやすい大きな理由ではないでしょうか。

エネルギーを消費する意義

ここまで、ビットコインの環境負荷に関する批判に対し、反論を述べてきました。しかし、そもそもビットコインに対して良いイメージを持ってない人にとっては、これらの反論もあまり心に響かないでしょう。ビットコインにエネルギーを消費する意義がないと考えていれば、どれだけそのエネルギー消費が想像よりも合理的な量であると唱えたところで意味はないからです。

ただ果たして、エネルギー消費は常に合理的なものに用いられているのでしょうか?

出典:"This Machine Greens" - Bitcoin Documentary

上記は、ランダムな4つの業界における年間消費エネルギーの大きさを簡単に可視化したものです。

まず興味深いのは豪華客船などのクルーズ船業界では年間にビットコイン業界の約二倍のエネルギー消費をしているということです。

また、利便性のためにPCやスマホ、スマートスピーカーなどの常にオンモードになっているデバイスのエネルギー消費量は年間でビットコイン業界の約12倍だといいます。

また、このグラフにはありませんが、クリスマスのイルミネーションにおける電力消費量はビットコイン業界のそれよりも大きいといいます。

これらのデータを見た時に、果たしてビットコインは特別に無駄なエネルギー供給先と言うことができるでしょうか?個人的にはそうは思いません。

そもそも、ビットコインにエネルギーが必要な理由は何でしょうか?

それはこれまで通貨の価値が保たれてきた根源である「プルーフオブワーク(PoW)」にあります。

古来から北米の先住民らが使っていた貝殻のお金や、ミクロネシアで使われていた巨大な石の通貨、そして現在も流通する金など、通貨として使用されてきたモノには価値の裏付けとして「時間と労力」がありました。それがビットコインにおけるマイニングであり、ビットコインは通貨の歴史の一部に過ぎないことが分かります。そしてそのマイニングには消費電力がかかる、それは通貨としてのビットコインの価値裏付けに必要なものなのです。

おわりに

今回は、ビットコインへの「環境負荷が大きすぎる」という批判に対し、誤解されがちな要点をクリアにしながら個人的な考察をしました。

基本的には、批判への反論という形になりましたが、それは決して「ビットコインはそのままでいい」と主張しているわけではありません。

その消費エネルギーの大きさ、そしてその半分近くが炭素を排出するエネルギー源であることは改善する必要があります。再生可能エネルギーのさらなる開発、利用にビットコインが貢献することができれば、こんなに嬉しいことはありません。

暗号資産ジャーナルでは暗号資産に関する記事を投稿しています。

気になる記事がありましたら、是非チェックしてみてくださいね!

 

おすすめの記事